『ワールドトリガー』27巻の感想と考察

ワールドトリガー』27巻がついに発売されました。嬉しい。

なんか書きたくなったので、感想を話の順に沿って書いていこうと思います。

※完全なネタバレを含みます。未読の方は必ずブラウザバックしてください。

※「○○話の○○のシーンで、」などの表現を使います。既読の方にしか伝わらないと思いますがご容赦ください。

 

232話「遠征選抜試験㉙」

戦闘シミュ―レーション演習3日目にして最終日。二宮8番隊が昨日までと打って変わって劣勢を強いられている。行動力に制限を抱える千佳への集中攻撃が有効手であることにほとんどの部隊が気づいたからだ。

→後ほど明らかになるが、古寺や水上が二宮8番隊のパラメータを横流ししていたため、万全の対策が立てられていたのが原因。

そんな中で、諏訪7番隊との対戦。

メガネ「まずは千佳を狙います。誘導弾の射程に入らなければ大丈夫」

↑鬼畜過ぎる 仮にも幼馴染に対して取れる戦術じゃないよ

 

この話で注目すべき点は、これまで諏訪7番隊、若村11番隊、(あと水上9番隊)の視点で描かれていた閉鎖環境試験が、完全に二宮8番隊視点で描かれているというところ。1話まるまる使うからには、重要な伏線や転換点を含んでいる可能性があると考える。

(じゃあ水上9番隊が1話使っていたのは何かの複線なのか?と言われると微妙なんだよな……水上というキャラの策謀と照屋という夫人の強さが際立ってて良い回だったが)

この伏線を解くには、「二宮8番隊のメンバー構成はなぜこうなったか」に着目しなければならない。24巻207話にてクジの番号が操作されており、ドラフトで選んだと思われた臨時部隊も実質的に上層部に決められていたということが明かされている。二宮はクジの番号がかなり良かったので、東・千佳は二宮が取る想定をされていたとみて間違いないだろう(絵馬まで想定されていたかは疑問)。ということは、上層部の狙いはやはり「千佳を東・二宮に鍛えさせる」ことにあるとみて良さそうだ。他にも、鳩原と同じく人を撃てない千佳を二宮の指揮下に加えることにより、二宮のコンプレックス的な過去を刺激して二宮の成長を促す目的もあるかもしれない。

 

233話「遠征選抜試験㉚」

二宮「雨取 ここまでで 何か気付いたことはあるか?」

この質問には「自分のデータが漏れていることに気付いているか?また対処法を考えることはできているか?」という表の意味と、「自分の力でどうにもならない場合はすぐに誰かに助けを求めろよ」という裏の意味が込められていると思っている。

東のフォローにより千佳は前向きに教訓を得ることに成功した。めでたし。このあと、遠征の中で千佳が誰かに躊躇なく助けを求めることで解決されるシーンが出てくるのだろう。

……これだけとは到底思えない。前話の考察を踏まえると、どちらかといえばこのシーンは二宮にとっての成長に繋がっているはずだ。やはり二宮は、千佳に鳩原を重ねている。二宮が過去に鳩原にしてあげられなかったことを、掛けてあげられなかった言葉を千佳にする/言うことで、二宮が前を向くきっかけを作ろうと上層部は考えていたのかもしれない。

 

戦闘シミュ3日目の結果が公表。諏訪7番隊が1位。北添4番隊が2位。北添4番隊はここまで、染井の洞察の深さや戦略の幅広さが光っている。「……彼女も幹部候補に入れていいのでは?」という唐沢さんの発言が何かの転換点になるのかは分からないが、B級ランク戦の玉狛第二vs香取隊vs柿崎隊から続く香取隊プッシュには必ず意図があるだろう。順当に考えれば、香取か染井が遠征時のキーパーソンになりそうだ。

 

234話「遠征選抜試験㉛」

水上9番隊の話が半ばまで続く。水上を林藤支部長に喩える迅に対して、忍田本部長は苦笑いしてそう。水上を「あの手この手搦め手なんでもあり」の人材として評価するに落ち着いたようだ。水上を臨時部隊の隊長にしたのは、生駒という適当人間をトップに据えていてもB級3位に君臨できていた彼の指揮能力を測るためだろうか?

 

見逃せないセリフが後半にあったので取り上げる。

忍田「若村を臨時隊長に選出したのは ボーダーという組織の将来を考えた上でのことだ

若村に臨時隊長をさせることがボーダーにとって重要事項になるのか???

これが本当なら、若村は今後絶対に無視できないほどのキーパーソンになるということだ。これを読み解くためには、各臨時隊長の選出理由について改めて考える必要がある。

 

臨時隊長はどうやって決まったのか?

209話で諏訪が言った通り、大まかにいえば「幹部候補」と「隊長候補」の適正を見るため、で正しいだろう。二宮や諏訪はランク・年齢が高く、ガロプラ戦でも諏訪が指揮を執ったように幹部への道が既に見えている。柿崎・来間は個人としての戦闘能力は中程度であるものの、19歳で比較的年長者であり、何より人望がめっちゃ高い。

諏訪「王子もギリそうかもな」と言っていたように、王子が微妙なところである。B級上位の隊長、かつ頭脳派であるという点で二宮と共通しているので、幹部候補枠と言われても違和感はないのだが……。なお他のB級上位の隊長は、影浦・生駒は幹部に向いてなさそう、弓場は副官ポジっぽい、那須は隊長だけど体調が……。あと東さんは既に幹部だろ。ということで、消去法で王子が候補になった可能性がある。

次にA級だが、歌川と古寺は次期隊長だろう。順当に行けば風間は幹部になり一線を退くため、歌川が隊を引き継ぐことが予想される。古寺に関してはボーダーの部隊の変遷が分からないが、もし弓場隊の王子蔵内のような独立が多いのならば、古寺の独立はそう遠くないのではないだろうか。地形戦への造詣が深いというのが彼の強みなので、上層部が古寺を高く買っているのではと思う。

反対に隊員役である菊地原と木虎だが、菊地原はどう考えても隊長に向いてないし、木虎は広報部隊である嵐山隊の一員のため、そう簡単に独立したりはしないだろう。よって隊員役での参加なのだと考えられる。

残るは北添・水上・村上・若村だ。

水上は生駒を抜きにした彼の指揮能力を測りたかったのでは?という推察を先にしたので、置いておく。

村上に関しては、①来間が幹部になった際に隊長を引き継ぐため、その試験。②強化学習のSE持ちに隊長の経験を刷り込むとどうなるのかの実験。という2つが理由として考えられる。

不可解なのが、北添と若村だ。隊長経験者ではない、幹部候補にもなりそうにない、そもそも指揮能力が高くないという共通点がある。あえて挙げるとすれば、それぞれ影浦・香取という気分屋がトップを務める隊のNo.2であるところか。ここは水上と共通するが、上層部がわざわざ適性を測ろうと思うほど指揮能力が優れているようには見えない。しかし、考え続けているうちに、最悪な仮説が1つ浮かんできた。

それは、どこかのタイミングで影浦と香取が死ぬという説である。

上層部の会議に迅が同席しているということは、ある程度未来の分岐を明かした上でこの閉鎖環境試験が行われていると考えて差し支えないだろう。ということは、高確率で死ぬ未来が待っている人物は把握されているだろう。

もっと言うと、若村がしっかりしていなければボーダーという組織そのものが危うくなるとまで言われている(?)ので、遠征中などの最重要盤面で亡くなるのでは?という予想が立つ。いや最悪ですが。

もっとマシな仮説としては、大規模侵攻の修や三輪のように、なにか未来の分岐点に関わる地点に若村がいる、というところだろうか。問題は、若村は隊としても個人としても遠征に行ける可能性が0に等しいため、その分岐点は近界ではなく玄界にある、ということになってしまうことだ……。

23巻202話より、迅が「アフトの属国のデータをもらったことで おれは三門市を守ったほうがいい感じになりそうなんだよね 未来的に」と言っていたように、遠征中にもアフトかロドクルーンが玄界に侵攻することが示唆されている。なので、そちらの防衛に若村がキーパーソンとなるという可能性もあるだろう。

あと考えられることとしては、もっとずっと未来の話(それこそ5年10年先)だが、ボーダーのさらなる発展の際に若村の力が必要になる説である。これは完結までに回収される気がしないので、この線は薄いと考えている。

 

235話「遠征選抜試験㉜」

影浦「ウチはもう 戦闘(バトル)だけで食っていくわけにゃいかねーんだよ……」

があまりに気になった回。その後が鳩原回想回で、影浦隊の降格理由が明かされたため、たぶん絵馬を遠征に連れて行こうと必死になっている途中なのでは、というのが真っ当な推察だと考えられる。

ただ、上記の「影浦死亡説」が真ならば(そんなわけないが)、まだ何か裏の事情があるのではとも思えるので、今後の展開を注視したい。単行本勢だけど。